お墓を先祖として崇敬

㊳お墓を先祖として崇敬

株式会社德風會・祭祀研究所 代表取締役社長 竹谷泰則

 「吉相墓」は、供養塔に「○○先祖各霊菩提」として、ご先祖様をお迎えし、石塔に戒名を刻入して、‟霊を祀る「供養の墓」”だけでなく、霊が宿り、ご先祖様が子孫を守護していることも現し、お墓(石塔)をご先祖様として崇敬します。
 そして、先祖の祭祀には、先祖と父母を敬う心が肝要です。
 十地経には、利供養・敬供養・行供養の三種の供養があると。
 利供養とは、線香など物をもって供養すること。供物を捧げる供養です。
 敬供養(きょうくよう)とは、敬う心をもって供養すること。故人を尊敬し、感謝すること。徳を偲びまた讃え供養をすることです。真心を込めた供養が良い、讃嘆恭敬(さんだんくぎよう)する供養です。讃嘆とは、深く感心してほめること。恭敬とは、つつしみうやまうことです。
 行供養とは、お経を唱えること。陰徳積みも、この行供養と言えるでしょう。身をもって供養し、ご先祖様への報恩感謝に回向します。  

 楽翁公(松平定信)‟燈前漫筆”には。「人の父母先祖におろそかに疎なるは、自ら木の根をゆるがして倒すに異ならず、その根枯れたら数々の枝葉も従て枯れるのは皆人の 知る所なり、然れば父母先祖にあつくして子孫の繁栄を祈るべき事なり、誰れか子孫の繁栄を願はざる者あろうか、しかるに父母先祖に疎略にして、頼むべき筋もなき佛神に媚へつらいて、 子孫の栄えん事を願うは道理なき事なり。」と父母と先祖を敬って厚くすることが、子孫の繁栄に大切であることを説いています。
 「吉相墓」は、敬供養の墓です。先祖という根を養い、枝葉の子孫繁栄を願います。先祖と父母のお陰様で今の私達があり、先祖と父母を敬う心が肝要です。
 祖先崇拝ですから、お墓をご先祖様として崇敬の念をもって、聖域として大切にお守りすることが大切です。
 陰宅風水では、もし、ご先祖様を軽視していれば災厄が子孫にもたらされますし、逆にご先祖様が満足ならば、子孫に利益が及ぶと考えます。

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