㉜戒名を刻入し霊を祀る

株式会社德風會・祭祀研究所 代表取締役社長 竹谷泰則

 「吉相墓」は、夫婦墓の竿石や、五輪塔の軸石に、戒名を刻入してお祀りします。手厚く祀り、石塔に霊が宿り、‟お墓は先祖”であり、霊を供養するのです。
 「○○家之墓」と刻入された戒名のない石塔は表札と同じです。薄い板石に戒名を刻入した霊標は、石の過去帳であり戒名や亡年月日の記録だから、先祖と父母を祀っている形でないと観ます。
 戒名・法名・霊名・諡などの幽界の名を、簡単に風化によって分からなくなりにくいよう石塔に刻入します。
 深く刻入するのもカケを造るのと同じように考えます。薬研彫り(断面がV字に彫ること)が理想ですが、手間が係るので薄く掘っています。
 木の標は腐って長持ちしません、石に刻入すれば、数百年でも刻入された文字が判別出来ます。末永くその霊をお祀りする形です。  

 「吉相墓」は、必ず戒名を刻入した上に、黒色や濃紺で戒名の文字をハッキリとさせます。
 戒名の文字が黒々としているのが、供養している形です。
 文字がカスレて来ているのは、供養が枯れて来ている形。
 新しく建立した石塔も、年月がたつと風化して文字の色が淡くなったり、消えたりする。それは、祀っている法名・戒名の霊への供養が弱くなって枯れて来ているのです。文字の色がカスレて薄くなったら、ペンキと筆で色を入れて下さい。
 妻を生前戒名で夫婦墓に刻入する場合は、戒名の部分を赤色にします。赤色は生者を表し、建立者の名も赤色にします、赤色は生きている人の生気であり、赤々としてる方が生者の健康に良い。
 「吉相墓」は、戒名を刻入した石塔を、先祖と父母として大切にし祭祀します。戒名が刻入された墓石は人なのです。
 そして、祀り抜けがなく、上下・長幼の順を正しく、戒名を石塔で祀るのには、正確な家系図が必要です。戸籍・除籍謄本や、お墓や、寺の過去帳や、位牌・家の過去帳などの調査が重要なことになります。

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