⑥古いご先祖様は五輪塔へ

株式会社德風會・祭祀研究所 代表取締役社長 竹谷泰則

 供養は、いつまでもお祀りする場合と、ある程度の期間お祀りする場合とがあります。後者の場合は弔い上げと言って、供養が必要な期間が終わって“先祖”になったとして、以後年忌供養をしません。
 「吉相墓」は、弔い上げ以後の古いご先祖様を、先祖供養塔である五輪塔に、戒名(法名・霊名)を刻入してお祀りします。それは“先祖の集合体”になったお姿であると言えます。
  五輪塔の軸の正面の向かって右が上座になり、一番古いご先祖様(初代)をお祀りし、その左に代を継いだ夫婦を順々にお祀りします。また、子供などの逆縁は、向かって右面の逆位にお祀りします。
 宝篋印塔(ほうきょういんとう)は、長く続いた家でなければなりませんし、建立後の高さが高いので、墓地で一番背が高い墓になりやすいのと、五輪塔より複雑なので値が張るため最近は使いません。
 南無阿弥陀仏の供養塔を、建立している「吉相墓」がありますが、代が続いて来ると、五輪塔に建て替えなければ、弔い上げが出来ませんから、いずれ建て替える事になるので最近は使いません。  

 お墓でお願い事をする時は、この先祖供養塔の五輪塔に祈願、または祈願文を埋納します。代々の夫婦墓は、供養が中心になりますので、何かあった時の報告はしますが、祈願はしません。
  古い時代の五輪塔の一部には、地輪内部に遺骨を納めたものがあるとの事ですが、「吉相墓」は、遺骨式土葬なので、先祖の遺骨が骨壺などで残っていた時には、石塔の下か墳墓の土中に埋骨して自然に返します。
 古いお墓を「吉相墓」に建替えて、先祖を五輪塔にまとめる時は、それまで祀っていた古い石塔の竿石の部分を、有縁無縁慰霊塔でお祀りします。
 一度お祀りした戒名が入った竿石は、先祖をこの世に顕現(けんげん)したものです。埋めたり、割ったりしないで下さい。(台石・枠石などは、処分して良い)
 「吉相墓」は、墓所の中心的存在である五輪塔に「○○家先祖各霊菩提」として、ご先祖様をお迎えし、先祖の祭祀を家系の中心として大切にします。

©Taketani,Yasunori 不許複製・禁無断転載